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Deadchannel9000

Deadchannel9000, BeatMaker/Producer from Tokyo Japan.
(日本語/Japanese Translation)

December 15,2023

以前のインタビューに登場した3Pointz率いるAnarkick Beat RecordsからEPをリリースし、(本稿執筆時点)新たにScabBeatzとのアルバム「Under The Silence」をリリースしたビートメーカーDeadchannel9000に、これまでの作品や音楽スタイル、新作の聴きどころなどについて話をうかがった。

MentalPosition – まずは簡単に自己紹介をお願いしたいのですが、Deadchannel9000という名前にはどういう由来があるのでしょうか?

Deadchannel9000 – この度はインタビューのお話をいただき、ありがとうございます。北海道釧路市出身で、現在は東京調布在住のビートメーカー、Deadchannel9000です。名前の由来は、昔からSFが好きで、”Deadchannel”は繰り返し読んだ小説「ニューロマンサー」の序文から、”9000″は「2001年宇宙の旅」のHAL9000から取りましたが、名前自体に特別深い意味はありません。

MP – 音楽制作はいつ頃からスタートしたのでしょうか?過去のリリースをチェックした限りでは、2020年の「Lost Loops from Dead Channel – EP」が公開されている一番古い作品のようですが、本格的な制作は2010年代後半あたりからですか?

Deadchannel9000 – 最初に音楽制作を始めたのは1997年くらいで、大学生の頃です。中学生の時にHipHopにハマって以降、DJをやるようになったのですが、トラック制作にも興味が湧いてMPC2000を購入しました。最初にQuincy JonesのSummer in the City(The Pharcyde – Passin’ Me Byのネタ)をそのままサンプリングしてビートを作ったのは今でもよく覚えています。ただ色々あって、2、3年後に音楽制作から離れてしまい、そのうちに仕事や育児などに追われ、音楽制作していたことを忘れるくらい長く音楽と遠い生活を送っていました。

その後、世の中がパンデミックになったことで家にいることが多くなり、子供も手がかからなくなって、自分の時間が取れるようになったので「久しぶりに音楽を作ってみよう」と押し入れからMPCを引っ張り出し、音楽制作を再開しました。そして、すぐに作った作品が「Lost Loops from Dead Channel – EP」です。また1990年代には考えられなかったことですが、個人がストリーミングサービスで作品をリリースできる時代になったことも制作を再開する大きな動機となりました。

MP – リリースを全て聴いた感じでは、基本的に今時で言うところのBoom Bap~90年代HipHopの影響を色濃く感じられる作品が多いように思いますが、これまでの音楽制作のスタイルに影響を与えた音楽やアーティストについて教えてください。

Deadchannel9000 – 多くの人は若い時によく聴いた曲と似たような音楽を聴き続けるという研究結果がありますが、自分も正にそれだと思います。90年代のアンダーグラウンドHipHopには非常に影響を受けたので、未だにあの時代の煙たくザラついた太いビートを追い求めています。影響を受けたアーティストはキリが無いですが、初期のDJ KrushとDJ Shadow、Damu The Fudgemunk、DibiaseなどのLAビート勢、Bugseed、Illsugi、Budamunk、あとは純粋なHipHopのビートメイカーでは無いですが、Canooooopy氏の制作姿勢には音楽制作を再開するにあたり大きな影響を受けました。

MP – リリース全てを通して、トラックの雰囲気やスタイルがとても一貫していると思いました。アルバムごとにネタ選びも様々で、アイコニックなHipHopネタをうまく自身のテイストに仕上げていたり、どのトラックも非常にこだわりを感じます。基本的にはサンプリングが主軸になるかと思いますが、ネタ探しはどのように行なっていますか?レコードを掘ったり、あるいは、サンプルパックを使用することもあるのでしょうか。

Deadchannel9000 – ありがとうございます。とても嬉しいです。サンプリングのみで制作することには拘っていますが、ネタそのものに拘りはありません。以前は「レコードからサンプリングしてなんぼ」と思っていた時期もありますが、今はできたビートがカッコ良ければ何からサンプリングしても良い、と思うようになりました。ですので、レコードを掘ることはもちろん、YouTubeや、映画からゲームまで、なんでもサンプリングしています。上ネタについては、特別な理由が無ければサンプルパックは使いません。あとは、とにかく太くてタイトなドラム作りを意識してます。

MP – 制作環境について教えてください。Instagramの写真には、MPC2000やSP-303、SP-404が写っていますが、ジャケットデザインにAKAIのロゴを入れているくらいですから、MPC2000をメインに制作されているのでしょうか?

Deadchannel9000 – 基本は、MPC2000で一通り組んでから、ドラムや上ネタをシーケンス毎にLogicに取り込み、EQやプラグインでミックスします。その後、2ミックスをMPC2000でサンプリングし、dbxのコンプ、SP-303、SP-404SX、SP-404MKIIのエフェクトを通しています。特にSXのコンプと303のVINYL SIMの質感がめちゃくちゃ好きで、どちらかのエフェクトを必ずかけます。最後にそれらをLogicに戻して最終ミックスし、マスタリングを行うという流れです。ただ、ネタのチョップだけはSerato Sampleを使うようになりました。同じ作業をMPC2000でやると、とてつもなく時間がかかるので、そこだけは効率優先しています。ちなみにMPC2000は大学の時に買ったものを使い続けています。液晶焼け以外は全く壊れていません。いつかSP1200とAKAI S950も手に入れたいと思っています。

MP – 作品数の多さに比して、ラッパーとのコラボは最近作の「In My Mood」「Notepad」でフィーチャーされたAu Soulのみですが、今後、ラッパーやヴォーカルを入れた曲は増やしていきたいと思いますか?

Deadchannel9000 – 国内、海外問わず、沢山のカッコ良いラッパーと曲を作りたいと思っているのですが、なかなか機会がありません。現在は二人のラッパーとのプロジェクト「Tha Smuggler Beat Company」を進行中なので、形になるのが楽しみです。

MP – 「Consequence – EP」は、当サイトでもインタビューさせていただいた3Pointz率いるAnarkick Beatからのリリースでしたが、3Pointz自身が常に世界中のビートメーカーを探していると言っていたように、彼からのオファーでEPをリリースすることになったのでしょうか?

Deadchannel9000 – この作品は彼からオファーをいただきました。話をもらうまで彼のレーベルの作品をあまりチェックしていなかったのですが、Bugseed、Pigeondustもリリースしていることを知り、「是非お願いします!」と即答しました(笑)。当初はシングルでのリリースという話でしたが、こちらが送ったいくつかのビートを気に入ってくれて、「EPでリリースしよう」ということになりました。

MP – UKのLegacy Echoからは「Fragments – EP」をリリースし、他にも3つのコンピレーションに参加されていますが、このレーベルと出会ったきっかけを教えてください。

Deadchannel9000 – 元々レーベルの音源は聴いていて、インスタグラムでチェックしていたビートメーカー達がこぞってリリースしていたこともあり、「ヤバいレーベルだな」とは思っていました。ある日、インスタグラムにビートをポストした時、レーベルオーナーのChilla Ninjaから「この曲で次のレーベルコンピレーションに参加してみないか?」と誘われ、リリースが決まりました。そして、その曲以外のトラックも気に入られ、先にEPをリリースすることになりました。

ありがたいことに、この作品以降のコンピレーションには全て参加しています。「Legacy Echo Vol.2」はヴァイナルリリースだったので、昔からの夢が一つ叶い、かなり嬉しかったですね。

彼(Chila Ninja)は本当にナイスガイですし、レーベル運営の姿勢には本当に頭が下がります。彼のおかげで世界にビートを発信できましたし、世界中のビートメーカーと繋がることができました。3Pointz同様、チャンスをもらえたことに、とても感謝しています。

MP – 現在の音楽シーンは非常に色々な要素がミックスしていて、ジャンルで話をすることが難しいのですが、個人的に、今「HipHop」というカテゴリーに含まれる、TrapやDrill、エレクトロニックミュージックの影響が強い曲は、もはやHipHopでは無い別の音楽だと思っています。Deadchannel9000さんのトラックは最もHipHopが成熟した90年代の音が軸にあると思いますが、メンタリティとしては、やはりその時代の「HipHop」を意識されていますか?

Deadchannel9000 – 先ほどお話しした通り、自分は90年代のHipHopに最も影響を受けていますので、それが意識的か無意識的かは分りませんが、メンタリティは間違いなくそこにあると思っています。ただ「何がHipHopか」という話は、音楽的な側面と文化歴史的な側面で話が変わると思いますし、考えても仕方がないと思っています。その人が「HipHopだ」と思えば、それはその人にとってのHipHopなのだと思います。普段はTrapも聴きますし、HouseやTechnoも大好きでよく聴いています。ジャンルとしてはHipHopでは無いですが、カッコ良いと思う基準は自分の中のHipHopのフィルターを通している感覚が間違いなくあるので、そういうものなんだと思っています。

MP – 今回リリースされた「Under The Silence」についておうかがいします。スプリットアルバムとしてコラボされているScabBeatzの作品は、音の雰囲気としてはBoom Bap的要素が強いものの、全体的にはいわゆるLo-fi〜Lo-fi HipHopな印象が強いと思いました。収録曲は割とローファイ的なフィルターが強く、Deadchannel9000さんのビートもScabBeatzさんのトラックと統一感のある感じに仕上がっていましたが、なにか本作を作るにあたり意識されたことはありますか?

Deadchannel9000 – 音の面では特別意識したことはありません。ScabBeatzさんについては、恥ずかしながら最近C3LABからリリースしている作品で知りました。音の質感はLo-fiな感じかもしれませんが、ネタのチョイスも含めHipHopマナー全開なところに喰らいました。今回は、僭越ながらこちらからオファーさせていただいたのですが、ScabBeatzさんのビートはとにかくヤバいので、「こちらも負けないビートを作らねば」ということのみ考えていました。ちなみに制作依頼したあと早々に5曲送られてきて「仕事はえぇぇ」と思いました(笑)。2週間くらいで全てのリリース準備が完了しましたね。

MP – サブスクリプションサービスが台頭し、気軽に触れる音楽制作ツールが普及して以降、どのジャンルも曲の長さが短くなり、特にLo-fi的なビートものは1分台の曲が主流です。Deadchannel9000さんの過去作には、3分台のトラックも数曲ありますが、本作を含め、昨今の流れを意識して短く収めるように作っていたりはしますか?

Deadchannel9000 – 確かに最近は短めを意識しています。基本的にインストルメンタルでループ主体の音楽なので、同じループが長く続くと飽きるということもありますし、最近は短くまとまっている方がタイトだと思うようになりました。スキットなのに異常にカッコ良くて何度も聞いちゃうトラックとかありますよね。腹八分的な満足感というか…。

Deadchannel9000 – 多くの音楽が溢れている中、いかに飽きられず限られた時間で聴いてもらえるかという点も、曲の長さに表れているのかもしれません。昨今は曲単位のプレイリスト文化が全盛ですが、プリンスがグラミー賞のスピーチで「アルバムって覚えてる??」と言っていたように、「アーティストの1作品」という点ではアルバム単位のリリースは重要なことですし、重要視していきたいと思っています。

MP – 新作をリリースしたばかりですが、現在、着手している作品はありますか?又、有名無名問わず、今後コラボしたいビートメーカーや、フィーチャーしたいアーティストがいれば教えてください。

Deadchannel9000 – ありがたいことに、いくつかの海外レーベルからオファーをいただいています。一緒にプロジェクトを進めようと話をしているビートメーカーもいますので、2024年以降はそれらを順次形にしていく予定です。個人のプロジェクトしては、先ほどのTha Smuggler Beat CompanyやAu Soulとの曲も作っていきたいと思っています。他には、仲間内の腕利きビートメーカーと結成した「GONIN」というプロジェクトで、2024年4月のアルバムリリースを目指しています。
普段は仕事の関係で制作時間の調整が難しいですが、今後も頓挫しないようビートを量産していくつもりです。それから、Bugseedとはいつか何かの形でコラボしたいと思っています!

MP – 最後にこのサイトの読者や、ローファイミュージックのファンへメッセージがあれば、お願いします。

Deadchannel9000 – インタビューを読んでいただいた方、また何かの縁で作品を聴いていただいた方、本当にありがとうございます。皆さんに知っていただくことが、音楽制作のモチベーションに繋がっています。また、この歳になって、音楽を通じた同じ感覚の新たな仲間ができるとは想像もしていませんでしたので、今はとても楽しい気持ちでいっぱいです。
皆さんも失敗や後悔を経験したり、悲しい出来事やどうしようもない状況にぶつかることがあるかもしれませんが、好きなことを続けていれば人生は楽しくなるはずです!
作品はこれからもリリースしていきますので、興味を持っていただけたら、ぜひ作品を聴いていただければと思います!

PROFILE

北海道出身、東京在住のビートメーカー/プロデューサー Deadchannel9000。90年代HipHop的マナーを踏襲するオーセンティックなセンスで粗くスモーキーなビートとメランコリックなループを紡ぎ出し、UKやオランダのレーベルでのリリースを始め、国内外のビートメーカーとも精力的にコラボする気鋭のアーティスト。