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Shape Shifter

Shape Shifter, BeatMaker/Producer from Melbourne Australia.
(日本語/Japanese Translation)

November 14,2023

前回インタビューのインタビューに登場したVilianiとEPをリリースした、同じオーストラリアで活躍するビートメーカー/プロデューサーShape Shifterに、現地でのシーン、EP制作のエピソードなどについて話をうかがった。

MentalPosition – 今回はインタビューに参加いただき、ありがとうございます。SENSELESSのビデオを拝見してコンタクトを取りましたが、Shape Shifterさんは以前からInstagramでフォローしていまして、2022年には勝手ながらこのサイトでも紹介させていただきました(https://lo-fi.style/todays/shapeshifter/)。
プロフィールらしきものが見つからなかったのですが、Vilianiさんと同じビデオに出られているということは、同じオーストラリアで活動されているのでしょうか?簡単な自己紹介と併せて教えてください。

Shape Shifter – こんにちは!私は現在27歳のオーストラリア・メルボルン出身のプロデューサーです。Hip Hopは13歳の時に出会って以来、ずっとハマっています。最初に聴いたのはNasとGang Starr。アメリカやオーストラリアのアンダーグラウンドHip Hopはかなり好きですね。

MP – 現在聞くことができるリリースは2023年の「Puffin Shapes」や「Autumn Entries」、Instagramの投稿は一番古いもので2020年ですが、いつ頃からビートメイキングをスタートしましたか?

Shape Shifter – ビート制作を始めたのは18歳の時ですから、もう10年くらいです。最初は小さなMIDIコントローラーとFL Studioで作っていましたが全然ダメでしたね。良いものを作るために、長い間、試行錯誤してきました。良い音を聞き分けるセンスはあると思っていましたが、それを良い形にすることはなかなかできなかったんです。結果、2020年にようやくビートを世に出すことができました。

MP – beatbayで販売しているビートやInstagramに投稿されたトラック、過去のリリースを聞くと、ソウルフルなものもありますが、全体的にはシネマティックな雰囲気のサンプルや、良い意味でダークなサウンド、そして、都会の夜を連想させるサウンドが多いように思います。先日リリースしたEP「Keep Spleepin」を含め、ビート制作の際にサウンド面で意識していることはありますか?

Shape Shifter – 最近は色々なスタイルのビートを作るようになって、幅広さに自信がでてきました。いつも同じスタイルの音楽だと飽きてしまうので、実験的なものや新しいスタイルにも挑戦しています。Hip Hopのビート制作も色々なスタイルに対応できますよ。Soulネタからサンプリングするのが一番好きなんですが、ここ数年は、地元のアーティストに合わせてダークでシネマティックなビートを作るようになりました。ビート制作する際に一番意識しているのは、気持ちよくサンプリングができるかどうかです。サンプルネタがグッとくれば、リスナーに共感してもらえるビートはすぐに作れます。それから、最近はコンプなどのエフェクトをいじって、自分のトラックを違う雰囲気やテクスチャーに変えていくのにハマっています。ただ、基本的には自分の耳と勘に従って、サンプルネタが良い感じになるように作っていますね。

MP – リリースしているトラックは基本的にHip Hop〜Lo-fi的なサウンドですが、これまで自身の音楽制作に影響を与えたアーティストはいますか?

Shape Shifter – 自分のサウンドに影響を与えたアーティストは沢山います。例えば、J Dillaはもちろん大ファン。Dillaの思わず頭を揺らしてしまう、なんとも言えないサウンドは本当にマジックですね。他には、DJ Premier、Madlib、Pete Rock、9th Wonder、Nottz、Alchemist、Apollo Brown、Marco Polo、MF DOOM、Kev Brown、Nujabes、Havoc、RZA、といったアーティストに影響を受けました。

MP – 機材などの制作環境について教えてください。時々Instagramに映っているワークスペースを拝見すると、Native InstrumentsのMaschineで作業しているようですが、基本的にはMaschineでの制作が主軸ですか?写真にはSP-404もちらっと写っていましたが。

Shape Shifter – 今はNative InstrumentsのMaschine MK3とSP-404 MK2を使っています。基本は制作からミックスまでMaschineで完結しています。ヴォーカル録り、それと、ミックスやマスタリングにはFL Studioを使うこともありますね。ただ、機材よりも、自分のクリエイティビティをどう活かすかの方が重要だと思います。普段はマスタリングもやっているので、もしマスターしたいトラックがあれば、ぜひ連絡してください。

MP – 音源はサンプリング主体ですか?レコードなどからのサンプリングや既存のサンプルパックを使用したり、あるいは、シンセでフレーズを弾いて上モノを作成しているのでしょうか?

Shape Shifter – ダウンロードしたデジタル音源を主に使っています。レコードからもサンプリングしますが、ターンテーブルが壊れてしまったので、新しいのをゲットしないとと思っているところです。大抵は高音質なデジタルデータから使います。サンプルパックは、沢山持っているドラム以外のネタは使用しません。Beat Butcher fifth drumsとMarco PoloのPad Thai drum packsは好きで使っていますね。どちらも良いネタが多いですよ。それから時々、VSTやハードウェアのシンセを使って一からオリジナルネタを作ることもあります。

MP – 「Keep Sleepin」の話に行く前に、それ以前にリリースされた2作品についておうかがいします。「Autumn Entries」に参加しているCadet X、「Puffin Shapes」でのPuff Justice、Nelson DialectといったドープなMCは地元のアーティストですか?今の世代のラッパーはひと昔に比べてスキルが上がっていますが、これらの作品を聞く限り、オーストラリアには良いラッパーが沢山いるんじゃないかという印象があります。

Shape Shifter – そうですね、みんな地元のアーティスト達です。Cadet Xは2020年頃に紹介してもらったアーティストで、素晴らしいリリシストぶりに驚きました。ソウルフルなヴァイブがあって、とにかくお互い音のノリが合うんです。彼はThe Primative OneやKmodo、BilBy、RaといったメンバーがいるメルボルンのNine 2 Fiveクルーの一人。Nine 2 Fiveクルーとのプロジェクトや曲制作は現在進行中なんですが、彼らがやっていることは本当に楽しいんですよ。Puff Justiceは会うことの多い親友の一人で、会えば一晩中音楽制作しているような仲です。めちゃくちゃ気が合いますし、奇才ぶりにはいつも驚きますね。Nelson Dialectはアデレード出身のラッパーで、オーストラリアでもビッグな存在。最近ではUKの名門レーベル、High Focus Recordsとも契約しました。間違いなく国内ベストMCの一人です。ここオーストラリアには沢山のアーティストがいますし、30年以上ものHip Hopの歴史があります。シーンはいつも盛り上がっていますよ。

MP – Vilianiさんとの曲「SENSELESS」は、いわゆるBoomBap的なサウンドですが、BoomBap特有の90’sサウンドに偏りすぎず現代的な雰囲気もある、非常にドープでセンスのあるHip Hopトラックだと思いました。あのミュージックビデオの都会的な雰囲気ともマッチしていて、Vilianiさんのラップの良さも引き出されています。彼女とはどのように出会って、EPを制作することになったのでしょうか?面白い制作エピソードなどがあれば教えてください。

Shape Shifter – 本当にありがとうございます。あのEP制作は本当に楽しかったです。Viliとは彼女のパートナーでもあるCiecmateを通じて知り合いました。Ciecmateはメルボルン出身のMC、プロデューサー、エンジニアで、自身のレーベルBroken Tooth Entertainmentから20年以上曲をリリースしているアーティストです。彼には、彼の運営するウェブサイト「beatbay」でビートを売らないかとも誘ってもらいました。VilianiとCiecmateと実際に会ったのは、友人のDoozとVaye Kが企画したNSW(New South Wales)の洪水被害救済イベント。その時に二人と話が盛り上がって彼女に気に入ってもらい、その後、EPのプロデューサーを探しているからやってみないかと言われたんです。その時はもう彼女のファンでしたから、すぐに引き受けましたよ!それから彼女が気に入りそうなビートを沢山送りつけて、その中から6曲選んでもらい、「Keep Sleepin」が完成したんです。

MP – 地元にも盛り上がっているビートメーカーのシーンはありますか?現在、多くのビートメーカーの主戦場(発表の場)はオンラインですので、音楽制作に国や土地は関係ありませんが、ビートメーカーやMC、DJが集うイベントなど、オフラインでの面白いシーンがあれば教えてください。

Shape Shifter – もちろんオーストラリアでもビートメーカーのシーンは盛り上がっています。Must Volkoff、Saint Surly、Insideus、Ciecmate、Cashno、Phil Gektor、The Primitive One、Trials、Delicasteez、Outpost 31、Discourse、Krass、Tornts、Dazed、Dyl Thomas、Dolphin Jones、O_T、Treb Won、Stone Kutter、S7_beats、そして、Bro 58。彼らはオーストラリア出身の私が好きなプロデューサー達です。現場のイベントについて言えば、Lo-fiミュージックやSP-404を使って演奏するようなシーンはメルボルンにもありもます。自分はまだ出演したことがありませんが、ビートバトルには参加してみたいですね。

MP – 状況はだいぶ落ち着きましたが、世界を苦しませたコロナ禍においても、ビートメーカーは自宅で曲を制作し、オンラインで曲を発表して注目される機会が増えたように思います。特に、コロナ禍以前から流行り始めた「Lo-fi Hip Hop」と呼ばれるようなローファイミュージックの流れと共に、Shape ShifterさんのようなBoomBapやLo-fi的サウンドのトラックメーカーは活躍しやすくなったのではないでしょうか?コロナ禍以降の2〜3年でご自身や制作環境に大きな変化はありましたか?

Shape Shifter – メルボルンはおそらく世界で最も長く厳しいロックダウンがありました。2020年には一切外出できない期間が5ヶ月もありましたからね。この期間のほとんどの時間を使って音楽制作の技術がだいぶ磨かれました。ロックダウンのおかげで、だいぶプロデューサーとしてのスキルが上がったと思いますよ。COVID以前は曲を正式にリリースしていませんでしたので将来の予測はつきませんでしたが、結果的にその数年が楽しい時間になりましたし、オーストラリアやUKのHip Hopシーンともつながることができました。ほぼ毎日、最低でも二日に一回は精力的にビートをSNSに投稿していましたね。規則正しく活動していれば必ず注目されるということもわかりました。(メルボルンのプロデューサー)Zac DazedとDicourseが「Quarantine sample(隔離中のサンプル)」という、オーストラリアのプロデューサーが多数参加したサンプルフリップチャレンジを始めたのですが、このプロジェクトを通じて沢山のつながりができました。

MP – 今後、新しい曲やアルバムなどのリリース予定はありますか?又、Vilianiさんとのコラボも期待できますでしょうか?

Shape Shifter – 進行中のプロジェクトは沢山あります。Polarityという自分のアルバム制作も終えたばかりです。このアルバムには沢山の地元アーティストが参加していて、ソウルフルな曲やダークな曲のコントラストが面白い作品になりました。UKやアメリカのラッパーも参加しています。年末までにはアナログでリリースできると思います。このアルバムにはVilianiとCiecmateもフィーチャーされていますから、この流れでViliとはもっと曲を作ることができると思います。

MP – 有名、無名を問わず、将来、コラボしたいアーティストがいれば教えてください。

Shape Shifter – UKのレーベール、High FocusやBlah Recordsのアーティストとは曲を作ってみたいですね。これがやりたいことリストの一番です。

MP – 最後にこのサイトの読者や、ローファイミュージックのファンへメッセージがあれば、お願いします。

Shape Shifter – インタビューを読んでくれてありがとう!LO-FI STYLE、そして、Mental Positionさん、素晴らしいインタビューに参加させていただき感謝しています。皆さんが曲制作をしていても、していなくても、好きな音楽をぜひ探し続けてください。時には自分のコンフォートゾーン(自分が気に入っている領域)から外れて、違う音楽を聴いてみることもオススメします。この広い世界には沢山の面白い音楽がありますからね。いま皆さんが聴いているLo-fiミュージックが生まれるきっかけとなったレジェンド、J Dilla、そして、Nujabesの二人は、愛すべきアーティスト達です。このLo-fiムーブメントのスタイルや技法を築いたのが彼らであるのは間違いないでしょう。Peace & Love

PROFILE

オーストラリア、メルボルン出身のビートメーカー/プロデューサー Shape Shifter。ソウルフルなサウンドからダークなトラックまで幅広いスタイルでドープなビートを繰り出し、地元シーンで活躍する。2023年6月には同じオーストラリア出身のラッパー VilianiとEP「Keep Sleepin」をリリース。